砂の器、天国への階段、恵まれない出自を隠して、才覚で生き抜く物語の主人公は多くの人の共感を得てきた。 浄瑠璃も歌舞伎も、お上の法を犯し、運命に翻弄される人々を描いてきた。お上の規範と世間の情理は異なり得る。その歪み、その切なさ、その苦しみが…
仕事だから、毎日何かを「改善」するとか、「再生」させるとか、基本的には、世界を「より良く」するために労働している。けれども、本当のところ、もういいんじゃないかと思うことの方が多い。国破れて山河あり。限界集落が朽ちてもそこに花は咲くだろう。…
政策金利の引き下げを決定した委員たちはスーパーマーケットで買い物をしているだろうか。物価指数とひとくちにいうけれど、指数を押し下げているのはテレビやパソコン、カメラなどのデジタル機器、携帯電話料金など。その他衣料品なども貢献している。問題…
土井先生のエッセイでもうひとつびっくりした下りがある。それは、胡麻も海苔も鰹節も、美味しくて、日本人の食卓にあまりにも欠かせないものであったが故に、煎り胡麻や焼き海苔や削り節が普及しすぎて、日本の家庭から胡麻を煎る香りや、炙りたてのお海苔…
土井先生のエッセイ。 和食のおいしさは雑味がないこと、即ち清潔で、仕事が丁寧なこと、ということが突き詰められている。1対1対4と2対2対8のつゆの味は違う。なぜなら過熱する際に蒸発する水分量が違うから。焼き海苔を表あわせで炙るのは、裏面はつるりと…
家にかえって真っ先に会見動画を見た。 恐ろしかった。週刊誌の憶測記事を笑い飛ばせるようなものを、僅かながらも期待していたけれど、実際は憶測通りであることが、少ない言葉の端々から匂いたつ会見だった。3.11後の東電の会見を思わせる空気の重さ。それ…
若い男の子達がお正月に遊びに来て、話をしていて思ったこと。女性の表面的な美しさのみにとらわれることも、分かりやすいゲームを楽しむことも、美しい人こそが、運命の人だと思うことも自由だと思う。しかし、私はこんな生活をしているけれど、魂の伴侶が…
ヒトミワイナリーとミスユニバース ウェイパーとイスラミックステイト
孤独のグルメ、気が付いたらシーズン5です。登場したお店は、すっかり予約が取れなくなってしまいました。私が好きだったお店も出たことがあるけれど、地元の小さな印刷工場のお兄さんたちがキャバクラ通いの前にめしと酒をくらうお店に、急に食べログに「小…
/文学は多くの場合、現実的な役には立たなかった。たとえばそれは戦争や虐殺や詐欺や偏見を、目に見えた形では、押し止めることはできなかった。そういう意味では文学は無力であるともいえる。歴史的な即効性はほとんどない。でも少なくとも文学は、戦争や虐…
攻殻機動隊、あるいはいくつかの作品において、思想は人間の脳を浸食するある種のウィルスのように描かれている。 思考が一種のプログラムならば、体制という名の社会システムへの連動の阻害要因となる危険思想は、一種のマルウェアといえるだろう。特に暴力…
さみしいことは、教養主義から意識高い系への知的ファッションの移行である。かつて「実存主義とはなにか」が300万部を記録した日本。その頃から人々の知的レベルが下がったかというとそんなことは大してないはず。かつてサルトルを読んでいたであろう人々は…
ネットで手に入れられる情報の質が下がってきている。ブログ全盛期にはフォローしたいブログがいくつかあったのだけど、SNSの攻勢により、ブロガーの量が減り、自分が共感できる記事を探すことが難しくなった。加えてガムのような中身のない記事をつい読んで…
農業近代化で触れなかったもうひとつの論点。地方における市場競争。 日経ビジネスか、何かの金融雑誌かで、駅前にある売れないまんじゅうやを潰さなければ、地方再生はないという記事があった。地銀の融資方針が結果、地方停滞を助長しているという記事で、…
施設見学をしてきたので忘れないうちのメモ書き。特定性を排除するために少し内容は抽象化している。あと専門外なので色々不正確な記述もあるのはご容赦。集約化が進んでいる米栽培と異なり、授精、摘果、収穫等の人手が省略できない青果や果実栽培。ざっく…
人のことを反知性主義的だといって嘲笑する人は少なくとも賢くはないし、傲慢だし、自己反省は足りない。なぜなら、他者の意見に対して常に真摯に検討し、自分の思考、思想については謙虚に懐疑的であれ、常に他の考えを斟酌して自己更新するのが、「知性的…
シンプルなロゴ、分かりやすいシンボル、デザインされたフォントに紐づけられた商品イメージたち。私たちの生活からこれらのシンプルなロゴ達が消えてしまったら、あるいはごてごてとした絵や、味気のないフォントばかりになってしまったら、スーパーマーケ…
京都は大江に行ってきた。大江山といえば酒呑童子。お話にはいくつかバージョンがあるようだが、一条天皇の治世、京の町から女たちが消えていくので安倍晴明が見立てたところ、大江山の酒呑童子の仕業ということになり、源頼光と四天王という豪華メンバーで…
寝屋川の事件があって、ペドフィリアについてネットサーフィンしていたら、思春期の入口で自己の小児性愛を自覚して苦悩し、互助組織を作った若者の話がでできた。その記事の中でNHKが行ったとかいう調査が引用されており、小児性愛への興味を消極的とはいえ…
議員の話題が出ているけれど、折角の問題提起なのに、女性差別問題に帰着して、発言撤回とは残念だ。ひとこと、女の子は失言だったけれど、女性でも男性でも、コサインを勉強する必要がない人はいると思う、と言い切って欲しかった。読み書きそろばんに加え…
最近同世代の男性について非常に羨ましく思うのは、彼らが壮年期の入口にあるということで、社会的な充実に加え、人間的あるいは性的な魅力についてもきっと素敵になっていくのだろうなと、Facebookのタイムラインの写真のちょっとした1枚を眺めることが増…